精神疾患当事者家族の手記を読んで―永田豊隆『妻はサバイバー』(朝日新聞出版、2022年)より
食い入るように文字を目で追いながら、身体中がヒリつく感覚に見舞われた。
生きづらさから摂食障害に走り、壊れていく妻。
日常生活を辛うじてこなし、献身的に支えようとする夫。
周囲の理解と医療福祉に助けられながらも、息の詰まる生活はなかなか終わらない。重い精神疾患を持つ当事者の家族は、この手記を我が身に重ねて読んでしまうだろう。
夫である著者は、新聞記事としての冷静な観察眼と文章力を発揮しながらも、ところどころに堪えきれない感情を滲ませている。
妻の調子がいいときに作ってくれる手料理に思いを馳せ、妻にはこんな面もある、と肯定してみたり。
虐待や性被害など、妻の悲しい過去に触れ、病気の原因を客観的に分析してみたり。
精神疾患への偏見やそれに基づく社会問題に切り込んでみたり。
それらの文章がもたらす安心感は突如、妻の激しい症状によって掻き消されてしまう。
過食嘔吐、アルコール依存、認知症。
それに伴い、二人を包むささやかな日常生活も翻弄されてしまう。
借金、暴力、自傷、自殺未遂。
目を背けたくなる、嵐のような日々の描写と、その合間に挟まれる思慮深い考察が挟まることで、読者は平静を保っていられる。
これは著者自身がつらい日々を生き延びるために身につけた術を追体験しているようだ。
著者は一時期、適応障害になってしまう。それでもなお、日常を続ける努力を怠らない。
著者は反面教師にしてほしいと謙遜するが、私は、どんなにつらくても未来を良くしようとする姿勢に深く敬服した。
ただ、この努力を当事者家族全員に要求するのは酷だろう。著者も、「都市部に住む正社員の男性」という限られた視点から見えた光景だ、と言及している。
私もいち支援者として、このような悩みを抱える人にどう寄り添えばいいのか、考える機会になった。
また、本書にはどういう人や機関に、いつ、どのように頼るようになったか、といった描写もある。20年間、精神障害者と連れ添った成功体験として、学ぶことは多かった。
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